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いぬのせなか座

河野聡子『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』をめぐって

 

「紙飛行機」

そして五時がきて、スーパーのレジをアフリカが通過する

 

午後五時のレジのじじじとレシートの青い印字が今日の出来事

 

 

 

「家」

うつむいても/両手をあげても/この家がある

 

耳をかすめる電気バリカンジャスミンの香りにみちて後ろの老婆

 

 

 

「歩く人」

きょうはキャンプ地までずっと歩かなくてはいけないし

 

飯盒炊爨はんごうすいさんどうみても火星人やんけ爨、爨爨、爨爨爨、爨

 

 

 

「クマの森」

八十九年のあいだに/きみは何度かクマになり何度かヒトになる

 

とろとろとおかゆは皿にあふれつつあしたのゆめに母みて泣かゆ

 

 

 

「専用」

ぼくの首は7つしかない

 

丸ネジを穴に埋め込むぐりぐりと首はちぎれて防衛大臣

 

 

 

「一八〇秒」 八秒

 

男・シャツ/男・白シャツ/すりへった/ネクタイ/ゆれる/三五歳

 

 

 

「アレンジメント/シンポジウム」

 

墓場から四人の僧侶召還す出演料はいろはすみかん

 

 

 

「生物」

みえないものをおまえは怖がらない

 

ぬばたまの黒いてぶくろ滴れば夏の街路にろうにゃくなんにょ

 

 

 

http://twilog.org/jiro57

 

わたしの日々が/溜まってゆく/消えてゆく/すうっと/風の/なか/に/

 

 

 

ざぶん、ざぶん

 

ざぶん、ざぶん、ざぶれっせん

 

 

 

「代替エネルギー推進デモ」

 

 

 

「エアロバイク洗濯マシーン」

 

終日ジムに男女は励むあおあおと射精のようにウォッシングマシーン

 

 

 

「ペットボトル水上自転車」

 

水に浮くペットボトルのどんぶらこばかばかしくてやってられっかい

 

 

 

「ラジオ体操」

 

(タンタタタタタ)僕には愛がある(腕を前から上にあげて)銃殺

 

 

 

「穴あけパンチ」

 

雲の上から腕おりてきてまっぴるま都庁に穴があいたんじゃねえか

 

 

 

「エンピツ」

 

教室はトンボ鉛筆カリカリと環境依存はなかった

 

 

 

「靴」

 

わたしの靴とあなたの靴がならんでる彼方のここを想ういまどこ

 

 

 

「階段」

 

いまきみはここを見ていた階段を三段おりてここを見ている

 

 

 

「すべり台」

 

ぎんいろのひかりをすべる少年のササササザザザズボン放電

 

 

 

「ひかり」

 

てのひらは湖だからゆっくりとあわい光があふれてゆくね

 

 

 

ざぶん、ざぶん、ざぶれっせん

 

かなたからPuffer Trainやってくる今日はいちにち波のまにまに

 

ざぶん、ざぶん、ざぶれっせん

 

 

 

「マンダリン・コスモロジー」

火薬しめってないかな

 

あなたの腋のみかんの香りあいしてる宇宙の底にひかりはみちて

 

 

 

「ハロー」

もぎとった収穫は

 

パンダパンダパンダももいろのちっちゃな赤ちゃんハローハローハロー

 

 

 

「ブルーブック」

1947年、仕様書を暗記するほど読んで、事態に備えた。

 

何を待っているのだろうかしろがねのパーツは全てMade in Japan

 

 

 

(星々のあいだに立つ)

そのとき私はキッチンで朝食をつくろうとしていた。

 

それはもうみかんのような太陽だお尻に爪をずぶりと入れて

 

 

 

「ハンド」

ききたいことはたくさんあるから

 

てのひらをみせてくださいまんなかのみかんいろってとってもいいです

 

 

 

「アンダーグラウンド・テレビジョン」

地上の人々にはひみつだ/ぜんぶここからみている

 

チャンネルをビチビチ回したことがあるかい45678910 11 12 U 123

 

 

 

「とおくから星がふる」

でた! でた! でた!

 

カンカンと非常階段おりてゆく殺しあい助けあい愛しあい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*題は、河野聡子『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』の各タイトルからの引用です。

題に続くフレーズは、同書からの引用です。

 

 

 

 

 

 

 

加藤治郎(かとう・じろう)

1959年、名古屋市生まれ。

1983年、未来短歌会に入会。岡井隆に師事。

1986年「スモール・トーク」にて第29回短歌研究新人賞。

1988年『サニー・サイド・アップ』にて第32回現代歌人協会賞。

1999年『昏睡のパラダイス』にて第4回寺山修司短歌賞。

2013年『しんきろう』にて第3回中日短歌大賞。

歌書に『短歌レトリック入門』『うたびとの日々』『短歌のドア』『家族のうた』など。

未来短歌会選者。毎日新聞毎日歌壇選者。朝日新聞東海歌壇選者。

短歌研究新人賞選考委員。前川佐美雄賞選考委員。

書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」監修。

http://www.shintanka.com/shin-ei/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『地上で起きた出来事は

  ぜんぶここからみている』わたし

 

加藤治郎

 

 

 

 

2017.08.27